
大東文化大学経済学部 教授
2003年博士後期課程単位取得退学後、日本学術振興会特別研究員を経て、2007年博士(経済学)取得。
東京国際大学客員講師、大東文化大学専任講師・准教授を経て、2017年より同大学経済学部教授。
市場メカニズムの捉え方や、学生に教えるときに重視する点を教えてください
金融市場の市場メカニズムは強く働いていると思います。
金融政策では、そのメカニズムに働きかける形で影響を与えています。
例えば、マネーマーケットの需要を引き上げることで金利を上昇させたり、供給を増やすことで金利を低下させたりします。
学生さんたちには、需要と供給を意識して、どのようなときに金利が変化するのかを重視して教えています。
現在の金融市場における主要な課題を、理論とデータの両側面から教えてください
私は、理論・実証のどちらの面でも金融機関を意識して分析を進めています。
というのも、金融政策では金融機関の行動に影響を与えるからです。
中央銀行が公開市場操作で直接影響を与えられるのはほとんどの場合、金融機関です。
また、金融機関のポートフォリオを変えることができたとしても、その他の行動に影響が出ないことも考えられます。そうした経路についても意識して分析しています。
近年の日本経済における最大の構造的課題は、何だとお考えでしょうか
私は労働力不足が最大の構造的課題だと考えています。
人口の減少だけでなく、出生率も低下し続けていますから、労働力は継続的に減少しており、今後も減少し続けるでしょう。
労働力不足は総供給の低下をもたらし、継続的なインフレに繋がる恐れがあります。
こうしたインフレに対して、金融政策が与える影響は大きくありません。
高齢者や女性の労働供給の上昇にとどまらず、外国人労働力の供給を拡大するなどの雇用政策が必要となってきます。
学生にマクロ経済学や金融理論を教える際、意識されていることは何ですか
金融政策の決定過程については丁寧に説明しています。
日銀の政策委員会の構成や金融政策決定会合の議事要旨など、具体的な例を示して関心を持ってもらっています。
また、日銀当座預金への付利や日銀による金融機関への貸付が金融政策に与える影響についても、時間を割いて教えています。
単に「買いオペ・売りオペ」といった表層の知識だけでなく、現実の金融政策の実務がどうなっているのかを知ることによって、より理解が深まると考えています。
最近注目されている金融経済学の研究トピックを教えてください
私が見ている範囲では、環境・社会・ガバナンス(ESG)投資やグリーンファイナンスなどが注目されているようです。
金融分野でも、環境問題は無視できなくなってきているということでしょうか。
私に関しては、金融政策の問題を、最近注目されている因果推論を用いて検証する研究をしています。
金融政策の分野では膨大な研究成果が蓄積されていますが、そこに新風を吹き込めるのではないかと思っています。